2025/09/17 14:47
日本のミリタリーウェアには、海外の軍装とは異なる独自の美意識が息づいています。その中でも65式作業服は、実用性を最優先に設計されながらも、どこか端正で洗練された佇まいを感じさせる存在です。もともとは陸上自衛隊で演習や日常業務の際に着用されていたもので、無駄を削ぎ落とした直線的な構造の中に、日本らしい繊細なバランス感覚が表れています。
特に興味深いのは、そのシルエットです。作業服でありながら、着用するとシャツのように軽やかで、ジャケットのように立体感のあるシルエットが生まれます。袖口に設けられた大きめのマチや、滑らかにラウンドした裾は、作業効率だけでなく着姿の美しさにも配慮した設計で、ワークウェアという枠を超えた存在感を放ちます。
また、素材に使われた綿と化繊の混紡生地は、耐久性と軽快さを両立させつつ、ほんのりとした光沢感を帯びています。これは視覚的な上質感を与えるだけでなく、経年によって深みを増す表情を見せてくれるため、着こむほどに個性が際立っていきます。日本のヴィンテージミリタリーが世界的に見ても珍しいとされるのは、こうした細やかな設計思想が背景にあるからかもしれません。
現在では65式作業服は新たに生産されることもなく、年を追うごとに市場から姿を消しつつあります。数そのものが少ないうえに、コンディションの良い個体はさらに限られています。無骨でありながら洗練されたこのデザインは、他国のヴィンテージミリタリーでは味わえない日本特有の魅力を感じさせてくれるでしょう。
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