2025/10/21 17:21
かつて、野良着は特別な服ではありませんでした。
農作業や炊事、暮らしの中で自然に生まれ、家庭で仕立てられた日常の衣。
それは流行とは無縁の存在でしたが、だからこそ今、私たちが惹かれる理由があるのかもしれません。
藍で染めた木綿の布を、家にある針と糸で縫い合わせ、破れたところは何度でも繕う。
布が擦り切れても、まだ着られるように裏から当て布をする。
そんな「直して着る」という文化は、単なる生活の知恵を超えて、**日本人の美意識の根底にある“もったいない精神”**そのものです。
今回紹介する野良着は、表地に藍染の縞模様、裏地に深い藍無地を合わせた一着。
表のリズムある縞と、裏に潜む静かな藍色。
どこか詩のような構成は、デザインを意識して生まれたものではなく、生活の中で磨かれた美です。
こうした日本の古い作業着は、いま海外では「Noragi(ノラギ)」として親しまれ、ジャパンヴィンテージの象徴として注目を集めています。
フランスのワークウェアやアメリカのカバーオールと並び、海外の一部デザイナーやブランドがその造形や素材感に注目し、リメイクや再構築のインスピレーション源として取り入れることもあります。
「量産ではない」「一点ずつ異なる」「時間の経過がデザインになる」——。
それはまさに、スローファッションの考え方と深く共鳴します。
私たちが今この時代に野良着を手に取るのは、過去を懐かしむためではなく、
“手をかけて長く着る”という価値を取り戻すためかもしれません。
丁寧に染められた藍の色は、時を重ねるほどに深みを増し、持つ人の暮らしとともに育っていきます。
量より質を大切にし、自分のスタイルに誇りを持つ。
そんなスローファッションを愛する方にこそ、野良着は静かに寄り添ってくれます。
派手さはないけれど、手に取るたびに心地よい温もりを感じる一着——。
それが、この藍染の縞模様が語る日本の記憶です。
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