2025/10/29 17:13


昭和の街角には、どこか特別な空気をまとった小さな店がありました。その店で使われていた手ぬぐいには、店の誇りや美意識が自然に刻まれています。今回ご紹介する広袖の着物も、そんな「富士屋」の手ぬぐいをつぎはぎして仕立てられた一点です。



手ぬぐいに描かれた一富士・二鷹・三茄子のモチーフは、日本では古くから初夢に見ると縁起が良いとされる図案です。山や空、豊穣の象徴であるこれらのモチーフは、当時の暮らしにちょっとした遊び心と幸運への願いを添えていました。広袖のフォルムは、襦袢としての用途を想像させ、布の落ち感や袖の揺れは、現代のファッション感覚でも美しく映えます。



広袖の着物として仕立て直された布には、年月を経た独特の風合いがあります。つぎはぎ部分や経年変化の色合いは、ただの古布では味わえない深みを生み出し、着る人に静かな存在感を与えます。襦袢としてのしなやかさは、そのまま羽織として日常に取り入れることも可能で、洋服感覚でコーディネートしても違和感なく馴染みます。



さらに、この広袖着物はリメイクやインテリアとしても魅力的です。壁に掛ければアート作品のように空間を彩り、布として再構築すればバッグや小物に生まれ変わることもできます。昭和の手ぬぐいが、時代を超えて現代の暮らしに新しい表情を与えてくれるのです。



時代の記憶と人の手の温もりが重なった一枚は、ただのヴィンテージ着物に留まらず、見る人、着る人に想像力や創造のきっかけを与える存在です。手ぬぐいの小さなモチーフが紡ぐ物語を、ぜひ自分の生活の中で感じてみてください。




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